ちぐうはぐう (12/13)

脚本ちょい読み企画とは!!

6月3日より上演予定の脚本前半部分を、
公式ホームページで毎日1ページずつ
【先読み公開】していきます!

本編をより楽しみたい、
先にどんな話か気になる方は
ぜひご覧下さいませ。

6月2日までの13日間、
毎日更新してまいります。

この先ネタバレ注意!


藤一色 第九色公演
『ちぐうはぐう』

作・遠藤遥風
 

登場人物
 
遠澤(男)
松屋(女)


12

遠澤「それで辞めた団員もいるしね。」

松屋「…。」

遠澤「何でやってるか。
演劇を観に来られる場所を残しておくって意見も
あるし、出来る時が来るまでお金を貯めて、
大丈夫になったら公演しようって意見もあった。
お金かき集めて、無観客で配信でやろう、とかね。
でも、どんな理由も、命を失うリスクに比べたら、
軽くなっちゃうんだよね。小劇場の集客なんて、
まずは知り合いから声かけていくし、でも、公演を
中止した知り合いとかには声すらもかけづらいし。
俺達がやってる理由、俺がやる理由は、何なんだろうね。
演劇をしてない自分に価値があるのか。
だから、やる?
自己中心的考えに皆を巻き込む。
劇団員、客演、スタッフ、お客さん、その人達の
家族、まわりの人。
自分がずっと繋いできた縁をさ、コロナで辿って
壊していくような感覚でさ。
それを思うと、何を言っても、やらない理由の方が
強いんだよ。やりたいからやってるけど、
考える限りの手は尽くすけど、やりたい理由の
明確な答えが出ないまま、ここにいるんだよ。
強い理由がある人の言葉を借りてここにいるだけ。
それなのに、たぶん、俺は、皆がやらないって
言っても、やるんだよ、俺一人でも。
それが好きだからなのか、逃げられないからかも
わからない。
演劇やってコロナに殺されるか、演劇やらないで
自分で死ぬか。
狂ってんのかな。狂ってたら楽なんだけど。
ごめんね、明確な答えが出せないのに、
演劇やってて。」

松屋「…。」

遠澤「それでも、この劇団に入りたいと思う?」

松屋「まだ、本当かどうかわからないですからね。」

遠澤「本当なんだよ。」

松屋「そしたら、多分入らないです。」

遠澤「そうだよなぁ。」

松屋「どんな答えでも、受け入れるかはわからない
ですけど、でも答えが出ないって答えを受け入れる
ことは出来ません。
未来の私が入ってるってことは、うまく騙せてるん
じゃないですかね。」

遠澤「…換気しようか。」

 遠澤、入口を開けに行く。

松屋「これ、外に出たら、どうなるんですか。
私が2021年に生きていくのか。
遠澤さんが2018年に生きていくのか。」

遠澤「どの時代なんだろうね。どちらでもない
可能性もあるし。」

松屋「そもそも、何でタイムスリップが起きてるか
って話ですよ。
その、コロナ、より、こっちの方が死活問題です。」

遠澤「そうだね。」


続きは
明日6月2日(水)更新!